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【コラム】よくある質問にお答えします②「読書をしないうちの子に、おすすめの本を紹介してください。」

こんにちは!
オンライン国語教室・小論文教室のオトモです。

前回から、オトモによく寄せられるご質問にお答えしております。
今回のご質問は・・・

「子どもが全然本を読みません。何か、おすすめの本をご紹介してもらえませんか?」🤔

です。

  • 読書の楽しさや素晴らしさを知ってほしいが、どうしていいかわからない
  • 読書を趣味にして、読解力や語彙力を身につけてほしい
  • 親が勧める本は嫌がるので、国語の専門家に本を選んでほしい

そんな方のお役に立てるように
私なりの答えを考えをまとめてみましたので
ご一読いただければ幸いです!

①読書には主体性が必要

こんな記事を書いておいてなんですが、
私は国語の教室をしていながら、「おすすめの本」を聞かれても迷ってしまうことが多々ありました。

というのも、基本的には・・・

「人にすすめられた本」を読むよりも、まずは「自分自身が興味を持てる本」を見つけてほしい

と考えているからです。

以下、理由を説明していきます。

前提として、読書に必要なのは「主体性」と「集中力」です。

たとえば私は子どもの頃、読書をほとんどしない子どもでした。
とりわけ嫌いというほどでもなかったのですが、どうしても本に向かう気になれなかったのは、
家にいつでもテレビがついていたことも、大きな要因だと思います。

テレビやYouTubeなどの動画メディアは、主体性も集中力も必要としません。
勝手に面白そうな音楽と映像で気を引きつけてくれたかと思うと、受け身の姿勢のままエンターテイメントを供給してくれるため
これに慣れていると、自ら本を手に取り、ページをめくり、文字を読み進めるという主体的な行動が、面倒に感じてしまうのです。
また、たとえ読み始めたとしても、本の内容に没入するまでの集中力が続きません。

自分自身のこのような経験、そして当時の私よりさらに動画の視聴に慣れている生徒さんたちを見ていると

日頃から動画メディアに慣れきっているであろう読書嫌いのお子さんに対して
私から親御さん経由で本をおすすめしたところで、
じっくりと腰を据えて読むところまで辿り着くのは、難しいのではないか・・・と思ってしまうのです。

では、人から勧められた本をなかなか読もうと思えないのであれば、どうすれば良いのでしょうか。

大切なのはまず、「主体性」を根拠に読書へと向かうこと、つまり「自分で本を決める」ことです。

具体的には、図書館や大きめの本屋さんに行って、さまざまな本を手に取りながら、気になるタイトルを探してみることから始めてほしいと思います。
読書好きな友人の本棚をちょっと覗かせてもらう・・・なんていうのも良いかもしれません。
この時に選ぶ本は、大人から見るとちょっとふざけていたり、年齢の割に幼ないのでは?と思う作品でもまずはOK。

自分で何らかの魅力を感じ取ったものを実際に読み、それを面白いと感じること。

そんなふうに、自発的な行動を機とした成功体験こそが、「次もまた読んでみたい!」という積極性を育み、人を読書へと向かわせるのだと思います。

②星新一作品が、ちょうど良い?

上に書いたように、私としては「ぜひ自分で本を選んでほしい!」という思いが強くあります。
実際に「おすすめの本」を聞かれた時にもこのような返答をすることも多かったのですが、

これだけでは、せっかく質問をしてくれている相手の思いには、ストレートに応えられてはいない気もして
ちょっと申し訳ないなという思いが残っていました。
(おそらく、質問してくれた方は私の国語講師としての読書歴や経験値に期待をして、何らかの本のタイトルを紹介してほしいと思っているはずなので・・・)

そこで今回は、何度も同じ質問に悩み、考え抜いた結果、
これならば、誰にでもおすすめできるという本を見つけたので、ご紹介します。

それは

「星新一のショートショート集」です✨

以下、理由を説明していきます。

①短い

先ほども書いたように、読書をしない子は「本に没入するまでの集中力がもたない」ことが多いです。
そこで「ショートショート」のように、一話がすぐ終わる作品が、まずはおすすめです。
さらには、先に親が一通り読んでみて、一番おもしろいと感じた話を「これ読んでー!超面白いから!」という感じですすめてみるのがおすすめです。

とっかかりを一話だけに限定することで、読んでみるためのハードルが下がりますし、
「家族と読後の感想を共有したい」というミッションも読書の動機となります。
また、たとえ一話でも、最後まで読み切れたら達成感と自信に繋がるのも短編集を推せる理由です。

そして、一話でも面白いと感じれば、同じ短編集に入っている他の話も読みたいと考えるのは自然なことだと思います。これが主体的な読書のきっかけとなりそうです。

②読書ならではのエンターテイメント体験ができる

おそらく、読書をしない人の多くは「白黒で文字だけの本より、音楽や動画の方がにぎやかで楽しい」というイメージを持っているかと思います。
読書の、孤独で、暗くて、真面目で、地味なイメージをどこか嫌厭しているのではないでしょうか。(私も子どもの頃はそうでした)

しかし、必ずしも「おもしろいもの=にぎやかなもの」というわけではありませんよね。
読書には、「ただ文字を追うだけ」という、静的で極めて限定的な活動に注力するからこそ体感できる特有の楽しみがあり、
これを実感することが、こんなにも便利な娯楽に溢れた時代に、敢えて人が読書に向かう理由になりうるのだと思います。
このような、読書ならではのエンターテイメント性をぜひ体感して欲しいと考えた時、
導入として、なんともちょうど良いのが、星新一さん作品です。

というのも、星さんの短編小説には、最後の一行でオチがわかるような、いわゆる「どんでん返し」の秀逸な作品が多いのです。
その「オチ」はどれも、最低限の情報量に絞られた簡潔な文章を、想像力で補いながら読むことによってこそ楽しめるものであり、ここには読書以外のエンターテイメント作品では絶対に得られない快感があります。
(実際、いくつかドラマ化されたものも見たこともありますが、原作のシンプルな面白さは映像では表現し難いのだろうな・・・と感じました)


単純に見える文章の組み合わせから導き出される、最高のオチ


これを味わえるエンターテイメントは読書の他にありません。


星さんの作品を通じて、他のエンタメにはない読書の魅力を気楽に体感してもらえれば、
これまで活字嫌いだった人にも、読書の魅力がきっと伝わると思います。

③親しみやすい語彙や文体

「おすすめの本」について質問をしてくださる方の中には
「うちの子、漫画は読むのに読書は苦手なんです・・・」という方もたくさんいらっしゃいます。
このようなお子さんは、静かに本に向かうことが苦手・・・ではなさそうです。

彼らが苦手意識を感じているのは、おそらく読書の体験そのものではなく
「書き言葉特有の文体や語彙」なのではないでしょうか。

たとえば、私の好きな文学作品に宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」があります。
この作品は、熱狂的とも言えるファンも多い一方、
読書をあまりしない人からは「読みづらい」「わけがわからない」「眠くなる」というネガティブな感想を抱かれることが多い作品でもあります。

「銀河鉄道の夜」の読みづらさには、

  • 独特の文体
  • 宗教的世界観が前提とされていて、背景知識がないと理解できない
  • 科学的な用語や造語が多用される
  • 一貫性のなさ(執筆途中で作者が亡くなったこともあり、つじつまが合わないところがある)
  • 登場人物が覚えづらい

といった要因があるかと思います。
これらの特徴は物語の重層性を増し、慣れた人にとっては、読書を一層面白くする要素として好意的に受け取られるのですが
おそらく読書が不慣れな人には、集中力を阻害し、「自分には理解できない」と読書を挫折する原因になりうるものだと思います。

いくら私自身がおもしろいと感じていても、このような特徴がある作品を読書が苦手な方にはすすめるべきではないと思っています。

  • 親しみやすい文体と短文での構成
  • 身近な語彙で表現され、想像しやすい
  • 一貫性のある緻密な構成がなされ、最後まで読むといわゆる「伏線回収」の心地よさを感じられる
  • 登場人物が少なく、その名前もアルファベット一文字で表現されることが多い

といった特徴があり、「銀河鉄道の夜」とは対照的です。

読者がその世界観にスッと入っていけるような文章なので、おそらく文学作品を堅苦しく感じる人でも、漫画を読む時のような気軽さで読み進めらます。
それでいて、先ほど②で説明したような、読書らしい「深み」もしっかりと味わえます。

漫画好きでも読書を楽しめない・・・という方こそぜひ、星新一さんの短編集を手に取って欲しいと思います。


※星新一さん作品で読書に興味を持ち、もう少し文学寄りの作品も読んでみたいぞ・・・と思った方は「夢十夜」(夏目漱石)もおすすめです。
ショートショートっぽい軽さもありながら、さすがの文章力に重厚さも感じられ、楽しい作品です。

③一人で読むのが苦手なら、誰かと読むのもおすすめ

ここまで読んで、提案どおりにしてみたところで

自分で読みたい本を見つけられなかった・・・
星新一さんの作品も手に取ってみたけど楽しめなかった・・・

そんな人もいらっしゃるかもしれません。

そんな時は、人の手を借り、
読書好きな誰かに、その魅力を語ってもらいながら読書を始めてみるのはいかがでしょうか。

たとえば、オトモでには「精読」というスタイルの授業があります。
芥川龍之介の「蜘蛛の糸」や「鼻」、宮沢賢治の「注文の多い料理店」や「セロ弾きのゴーシュ」など、
文学作品の定番かつ、比較的多くの人に面白いと感じてもらえる(が、読書に不慣れな人が自分で読むには難易度が高いと感じられる)短編小説を、
読書経験が豊富な講師と一緒に読み合わせる授業です。


私自身、読書をハマるきっかけになったのは高校生〜大学生にかけて行っていた「読書会」です。
先生や先輩、同じ大学の友人、初対面の名前も知らない人(!?)まで・・・様々な人と、1冊の本を読みながら、その解釈を話し合う機会を持っていました。

自分の発表に備えてじっくりとテキストを読み込むこと、自分の意見や解釈を資料にまとめること、自分以外の人の意見や感想を聞くこと、そこから考えたことをもとに対話をすること・・・


そんなふうに、人と共有し合う読書は、一人で行う読書とは違った刺激や楽しみがあり、
私の場合は、一人で読んだ時以上に、読書が自分の思想の血肉になる感覚、その本が自分にとって大切な一冊になる感覚を得られるものだと感じています。

私が読書会を始めたのは10代後半でしたが、できればもっと早く、このような経験をしてみたかったという思いもあり、
オトモにも「精読」スタイルの教材を取り入れるに至りました。

一人で本を読むことがどうしても苦手・・・という方がいらっしゃれば、ぜひご相談ください!
(ちゃっかり宣伝みたいになってしまいましたが、許してください😅)

まとめ

今回は
「子どもが全然本を読みません。何か、おすすめの本をご紹介してもらえませんか?」
という質問に答えてみました。

①まずは自分から読みたいと思えるものを探してみる
②それが難しそうなら、星新一のショートショート集がおすすめ
③それも難しそうなら、誰かと一緒に読んでみる

という順で、ぜひお試しくださいね。

少しでも悩んでいる方の参考になりましたら幸いです。

では!(^ ^)